2020/12/15 17:35


新作を作ろう。
奇をてらったものでなく定番を、でも細かなポイントはこだわりすぎるくらいこだわって。

作るのはミドルウォレット。
長財布でもなく、ショートウォレットでもなく、収納量と大きさのバランスがいいなと思ってのことです。
見た目も、ちょっとゴツくて勢いを感じますよね。

PEACE Leather craft の製品はすべて、使うシーンのことを考え抜いて設計することにしていますが、
そういったことをどんどん高めていきたいとの想いから、
試作〜自分でも試用するなかで得られるいろんな発見をすべて詰め込んだものを年末に作ってみようという企画です。

こだわりポイントは…
【設計】
・カードスロットX4
・ライセンスポケットX2
・フリーポケットX1
・大きく開く小銭入れ
・取り出しやすい札入れ(開口やホールド感も)

【素材・加工】
・フルベジタブルタンニン鞣し(ピット槽)昭南本ヌメを使用
・革はすべてハンドグレージングを行う
・カードスロットや小銭入れなど薄い皮の端面にはすべて捻引きを行いコバを引き締める
・コバ全体には、焼きごてで熱した蜜蝋を溶かし込んで磨き上げる


まずは設計。
閉じた状態での外形サイズは、縦14cm 幅9.5cm  厚さは約2cm(空の状態で)
一万円札がすっぽり入ることと、札入れを開くときに大きく&きっちりホールドを実現するために、札入れ開口部の切り込みを向かって左を大きく切り欠いて実現しています。

革に関しては、すべての革を水で湿らせ硝子板で磨き上げる、ハンドグレージングを実施。
その上でニートフットオイルをたっぷり含ませることで、防汚性や艶感のアップ、さらに、しなやかさと経年変化の早さを狙います。

カードスロット部、カード入り口には捻引き(熱したコテで飾り線入れ&コバ(端面)を熱によって引き締め)行った後、
コバには蜜蝋を溶かし込んであります。見た目の部分が強いとは思いますが、焼き締めることで多少はタフになるかもしれません。
縫い上げた糸はヒートペンで焼き留め。


カードスロット部アップです。
捻引きとコバの焼締め、グレージングした革の質感をご覧ください。

ハンドグレージングによって艶が増しています。
グレージングはやりすぎると、革が柔らかくなりすぎることもあるので、艶とコシのバランスを見ながら行っています。

また、カードが4枚重なるので、何も考えずに革だけの状態で縫い付けてしまうとカードを入れる際にすごくきつくなってしまいます。
上に重なるカードスロットほど左右幅をほんの少し広げ、カードをいれた状態で縫い上げることで、
カードの入るクリアランスをきちんと確保しています。



小銭入れ。
フタ〜ベース部分は2mm革で、手前面は一ミリ革。
その手前面にさらにマチをつけることでかなり大きく開口しますので、コインはとても見やすくなります。
フタの留め具は差し込みベルトにしました。
財布全体の厚みのアップにつながってしまいますが、まずはムード重視で作っています。
(製品版では、スッキリしたフタになるバネホックと選べるようにするかもです)


ミドルウオレットの特徴というか見た目にも大きなポイントとなるセンターシーム。
札入れの部分をこうしてつまんで、アウターよりも左右を短くすることで、財布を開いた際に札入れとアウターの間に隙間が開いて取り出しやすくするための工夫です。
ここは、先人の工夫とアイデアに敬意を表して、ぜひとも取り入れたかったポイントです。
シームのコバも蜜蝋を溶かしこんで磨き上げているので、すごく艶があります。


センターシーム&左右の切込みによって札入れは大きく開きます。


閉じたところ。
当然ながら、相応に分厚いです。

個人的には、こういったモノはこれでいいというか、こういうのが好きです。
存在感みたいなものが。

ちなみに、使い始めは革も固くてほっとくと勝手に開いてしまいますが、使い込むことで革もさらにしなやかになり、
きれいに曲がってきます。


コバの最終仕上げ。
もちろんアウターのコバも、ヤスリがけ、スリック、その後に蜜蝋を溶かし込んで仕上げました。
コバ顔料や樹脂系のものを塗れば楽に仕上がるのですが、
・コバ張り合わせの際のボンドの塗り方=下手に塗ると合わせ目にボンド層が見えて汚くなります。
・丁寧にすり合わせを行ってから磨き上げる=下地が整ってないと蜜蝋をぬっても美しく光りません。

そういうことが好きなんです。「ガチですよ」という事が。

すべて手作業なので量産はできません。

ハンドメイドってなんだろう?
と考えるとき、
デメリットではなくメリットは、量産品ではできない手仕事の良さ=手間暇とそのモノへの想いを込めることだと思います。

今回のこのミドルウオレットは、自分でしばらく使います。
内側の飾り枠の縫い付け方によるシワの軽減や、
インナーのベースの革は2ミリではなく1.5くらいの方がよりしなやかに使えるのではないか、
全体にミリ単位でもう少しコンパクトにできそう。
などなど、試作からのアイデアはすでにいくつかあります。
もう少し使うことで、もっとアイデアは出てくるでしょう。
そんな、数々の改善点を盛り込んで、
再びプロトタイプを作ろうかとも思っています。

こちらの商品はまたまだ先になりますが、
PEACE Leather craft の商品は、
その時時のベストを尽くして、いろんなことを考えて、こだわって作っていることを伝えられたらと思って書きました。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。